資本主義・社会主義・民主主義isbn:449237079X

打って変わって、半世紀前の経済学の巨頭シュムペーター先生による古典。5部構成、ハードカバーで700ページ弱という大著であることに加え、第一部が「マルクス学説」、第五部が「社会主義政党の歴史的概観」と、正直今読む価値はあんまりないかなと思う内容が頭と尻尾になっているので、読みきるのに苦労しました(というか最後のほうは読んでない)。
でも、間にはさまれた第二部「資本主義は生き延びうるか」、第三部「社会主義は作用しうるか」、第四部「社会主義と民主主義」は今でも十分に読む価値ありです。特に、「資本主義はその華々しい成功ゆえに崩壊し、社会主義へ移行していく」という第二部は、今の日本社会を考えると相当に精度の高い予言だったとわかります。資本主義の主役が、企業の所有者であり経営者でもある資本家から、経営を専門に行う「企業官僚」に移るという分析も見事です。
もうひとつ目を見開かれたのは、民主主義の定義。シュムペーターによる「民主主義の条件」は以下の二つ。

  • 人民が、自分たちの支配者になろうとする人を承認するか拒否するかの機会を与えられていること
  • 指導者になろうとする人々が、選挙民の投票をかき集めるために自由な競争を行えること

直接民主主義的な手法は、民主主義の本質ではないということですね。今、日本でも他国でも、「住民投票」といった形で直接民主主義的手法がもてはやされているようですが、混乱を生むケースが多いように思います。
私が思う、良い民主主義の社会はこんな感じです。

  • 選挙によって誕生した政権は、あまり妨害を受けずに政策を実行する。
  • 一般市民によるデモ等の示威行為はあまり望ましくない。本当にやむにやまれぬ気持ちの発露としてのみ行われる。
  • 政治家が何を議論し、どう決定したか(だれが賛成し、だれが反対したか)について、生データと整理された情報がともに十分に提供される。選挙民はそれを常に観察し、議論し、投票する。

なんか青っぽくなってしまいましたが、選挙のたびになぜか争点が「政治とカネの問題」にばかりなってしまうのはもううんざりです。与党が勝つと「争点がぼやけた」ことになっちゃうし。そんなわけねーだろって。スキャンダルやら汚職やらなんて二の次三の次ですよ。天下国家には、もっと大事な問題がてんこもりです。なんか本の内容からはだいぶ外れちゃいましたね。